昔はチベットの山村には学校というものがなかったので、子供が成長する段階で、文字が読めるようになりたいと思ったら、僧院に入って僧侶になる必要があった。そうでなければ、幼少期の生活は、村の中で遊ぶか、あるいは両親の手伝いをしながら過ごすことになる。子供たちは、放牧集団ごとに自然と遊びのグループができて、集まって遊ぶようになる。子供たちの遊びには非常にたくさんの種類がある。一番ほほ笑ましい遊びの一つが遊び場作りだろう。遊び場とは、子供たちがM村の様々な家屋を真似て、小規模ながら作り上げる世界で、道でひろい集めてきた石や土塊、小枝、割れたガラス、ぼろ切れなどを村の通りで見つけたものを材料にして、小さな家を建てるのだ。そして男の子なら一家の主に、女の子なら主婦に扮して、大人の真似をして暮らしの真似ごとをする。その際、口の聞きかたや身のこなしは大人の真似をして、お日さまの下でままごとをして遊ぶ。こうして遊び場をともに作った仲間は大人になっても親愛の情があるので、大きくなっても同じ遊び場を作って成長したんだといって親しくつきあう。
遊び場で遊ぶ以外にも、子供たちはさまざまな遊びをすることができる。例えば、小石投げ、碁、さいころ、おはじき、的当て、すもう、かくれんぼ、ケサル王物語ごっこなど数多くのものがある。これらの遊びについては詳しくは後述するのでここではわざわざ繰り返さないが、いずれにしても子供たちは村中の道という道で子供たちが群れをなして遊びに興じている。このにぎわいこそが、M村の静けさをかき乱す正体なのだ。