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2. ジャムの地に流れる時間

ラシャムジャ 著、星泉 訳
2-1-1-1. 男性の主な仕事について

具体的な話をしていこう。男性の仕事、女性の仕事、男女が共同で行う仕事の3つに分けたうち、まず男性の仕事の特徴は、家の内外の仕事で言えば外の仕事が多く、仕事の大小で言えば大きい仕事が多い。また、日常の仕事と季節労働の別で言えば、季節労働が多く、また肉体労働と頭脳労働の別で言えば、多くが肉体と頭脳の両方を使う仕事だという特徴がある。

男性の仕事の中で最も重要度が高いのは、家族の生計についてあらゆる面から構想を練り、将来に向けた計画を立てることである。この仕事を行う上では、賢さと知識を兼ね備えている必要がある。こうした構想を担当する男性は、家族の重要事項を決定する権限を持ち、常に家族の構成員全員の生活状況を考慮し、その責任を引き受けなければならない。M村には各世帯に、キムダク〔主〕と呼ばれるこうした役割の男性が1名ずつおり、多くの場合祖父または壮年の息子が担う。村の中で家の名を呼ぶときも、キムダクの名前を冠して○○ツァン、すなわち○○家と呼ぶ。M村のある家族をモデルとすると、その家族の重要事項とは、例えば息子の嫁取り、娘の嫁入り、家畜の売買、春の種まき、皮衣ツァル〔子羊の皮をはぎ合わせてつくる着物〕の仕立て、銀の佩物ジョロンや携帯用仏壇カウなどの装飾品のあつらえなどである。M村の言葉ではこれを「頭足を揃える」と表現する。他にも、家に僧侶を招いて法要を執り行うこと、生老病死などの一大事への対応、家庭内に祝い事や弔いがあった際に家族を代表して外部と対応すること、土木工事が必要なときに段取りを決定すること、家計を管理し、金銭の取り扱いに責任を持つことなどがある。いずれも各家庭において権限を行使する仕事であり、この仕事を担う者が主になれば、原則として、この人物がその家庭の権力者となるのだ。

ここで述べておかなければならないのは、主の地位は世襲制という点だ。それは父から息子へと受け継がれるものである。一般に主を務める人物が存命のときに、高齢化による肉体的、精神的な衰えの兆候が見られた段階で、壮年の息子に主の地位を譲って引退し、家庭の重要事項からは手を引く。そして六字真言を唱え、巡礼をするなど、この世を去る支度を始めるのだ。これはまつりごとの根本であり、最も一般的な方法ではなかろうか。

男性の担うべき重要事の中にはいくつかの宗教的な行事もある。私はこれを「天と関わりを持つ仕事」と呼びたい。M村の暮らしにおいては、触れることができ、目に見える自然環境とつきあうだけでなく、触れることも見ることもできない、虚空におわす神々とつきあうことも重要なことである。男女のうち、こうした神々とつきあう仕事は一般に男性が責任を持つもので、朝早く起きて家の屋上で「サン」と呼ばれる土地神供養の焚き上げをすること、吉日にはドンルガンにある在家行者堂や土地神の社ラプツェのある場所に行き、土地神供養の焚き上げをして、ほら貝を吹くこと、さらに正月には僧院に行って祈祷をし、家の屋上や山頂に祈祷旗を捧げ、峠や山の斜面に建てられた土地神の社を祀り、家畜を1、2頭選んで放生の儀礼を行うこと、家にラマや僧侶を招いて教えを仰いだり法要をしてもらったりする際に側仕えをすることなどがある。まとめると、宗教関連の仕事は男性たちが担当することになっており、ホリの領分なのだ。

他に男性が担う主たる仕事として農耕と牧畜の仕事がある。まず農耕の方面における男性の仕事には、春の種まきの時期には、畑にシチュ(春の放水)を行うこと、畑を耕すこと、種をまくことなどがある。また、夏の3か月はヤルチュ(夏の放水)をする責任を負う。秋の収穫期には、収穫後の麦束を脱穀場に運び、脱穀をして麦を天日干しする。その後、麦を袋詰めして穀物倉に運び入れ、収穫後の畑を耕し、畑にトンチュ(秋の放水)をする責任を負う。他にも家庭で使う道具類の補修、それらを適切に保管することなど細かい作業の責任も負うほか、時には包丁やナイフなどの刃物を研ぐ仕事も担当する。土木関連の作業をする際には、大きな石を運ぶ力仕事や、家の建物に壁を作る仕事、壁面の塗装などを行う際も、陣頭指揮をとるのは男性である。また、森に木の伐採に行き、家に運び込む仕事も男性が担う。春の果樹が芽吹く頃に木に登って枝払いをする仕事も男性が行う。M村では鍛冶、縫製、大工といった仕事も男性がこなす。第2に牧畜の方面で言えば、馬や羊、牛などの去勢を行うのは男性の仕事であり、馬のたてがみを切り、調教を担当するのも男性である。山にしばらく逗留して放牧をするのも男性が担当する仕事である。また、普段の羊の放牧はもちろん、毛刈りをして羊毛の塊〔15頭分くらいの羊毛を塊にして一人が背負えるくらいにする〕を作って管理をするのも男性の責任である。また、晩秋に家畜を屠って越冬用の保存肉グンシャを用意したり、牛やヤクの皮を液に漬け込んで皮なめしをし、靴や革紐をつくること、羊の皮を液に漬け込み、なめして、皮衣をつくる材料を準備することも男性の仕事である。つまり、牧畜関連の仕事のうち、規模の大きい仕事は男性が責任を持っているのだ。

これら男性の仕事はジャムの仕事の中でも極めて重要な仕事である。もし読者諸氏がM村の住人でなければ、この村の男性陣は一見したところ仕事もなくのんびりしているように見えるかもしれない。だが1年を通して見れば、男性たちがいかに重要な仕事を担っているかが理解できるだろう。男性たちはこうした仕事の合間に村の四つ辻に集まることを好み、わっはっはとうぉっほっほと笑い声を上げて会話を楽しみながら、時には先に説明した各種の仕事に関する情報交換もしながら暇をつぶしている。いずれにせよ、男性たちは先に述べたような大仕事をしっかりとやり終えてしまえば、次の大仕事までは休暇となり、のんびりとした時間を楽しむ。こうしたことに対して家族が腹を立てたり、なじったりすることはないのだ。

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