このページでは小説家であり研究者でもあるラシャムジャ氏が、チベット高原東北部に位置する故郷の農牧複合村の暮らしについて詳細に記述した『ジャムの暮らし――M村民俗誌』(2020年、中国蔵学出版社刊)を日本語で翻訳紹介していきます。1980年代のチベットの山村の暮らしを活写した記憶の記録ともいえる本書は、序論と4部構成の本文から成り立っています。まず序論をお読みいただいた上で、各部の目次から、好みの部分をご覧ください。翻訳は未完成ですので、引用などされる場合は最新のものをご確認ください。本書の書誌情報や執筆経緯、翻訳チームについてはAboutページをお読みください。
厳しい自然環境の中で土を耕し、家畜とともに生きてきたM村の人々は、長い時間をかけて農耕と牧畜を融合させた「ジャム」の暮らしの中で、生活文化を育んできました。著者は1980年代前半のとある晩秋の、羊を屠る一日に焦点を当てて、M村の生活知がどのように構成されているのかを説き起こしていきます。 (序論を読む)
チベット高原東北部の農牧複合村であるM村はどのような空間なのでしょうか。山々に囲まれ、雪解け水の流れ込む川の流れる谷あいに形成されたM村の自然環境について語り、その空間を畑、放牧地としてどのように利用しているか、集落がどのように形成されているか、また各世帯はどのような空間になっているのかなどについて語ります。 (目次を見る)
M村に流れる暮らしの時間という観点から考えたとき、その時間は手を動かして働くことから生まれていると著者は語ります。M村の仕事を性役割、家の内外、公私、世代などの切り口から整理してから、一家の主婦、主、祖父母、子どもにそれぞれ焦点を当てて述べていきます。そして後半では春、夏、秋、冬と季節ごとに村の生活の様子を詳しく語ります。 (目次を見る)
M村の人々はどのような風俗習慣を大切にしてきたのでしょうか。ここでは村の暮らしの最小単位である家庭の構成について詳しく述べたあと、その上の単位である氏族、そして隣組、村について述べていきます。そして後半では正月や成長儀礼、結婚式、葬儀などについて語り、さらに若者の恋愛事情、紛争解決の方法にも話題は及びます。 (目次を見る)
敬虔な仏教徒であるM村の人々の宗教生活に迫るため、M村の人々の信仰のよりどころとなっている僧院について詳しく語るとともに、僧院内の暮らしについても触れていきます。そして村と僧院がどのような関係にあるのか、そして、自然環境とともにある土地神信仰などについても述べていきます。 (目次を見る)