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チベットの物語を訳すことと描くこと (2)

タイトル

SERNYA編集長の星泉と漫画家の蔵西さんのダブルインタビュー、第2回は星のラジオ出演をめぐる裏話を、蔵西さんの挿し絵つきでお送りします。第1回なれそめ編はこちらからどうぞ。

インタビュアーの3人

E:星先生は3月2日にTBSラジオのアフター6ジャンクション(通称:アトロク)に出演されていましたね。

『白い鶴よ、翼を貸しておくれ』(以下、『白い鶴よ』)の著者、ツェワン・イシェ・ペンバさんの生い立ちや「初めてづくし」の生涯、翻訳の際の工夫(原文の中のチベット語を日本語訳ではルビで対処したこと)、この本との出会いなど、本書にも書かれていないことをお話しされていてとても楽しく聞きました。

実はこのラジオ出演は、蔵西さんの描かれた帯絵がきっかけだったとか。そのお話をお聞かせ願えますでしょうか。

:10月に本が出て、ラジオで紹介されたのは11月24日でしたね。ツイッターを見てたら知らない人から、「今ラジオでやってますよ」というメッセージが届いたんです。

すぐにradikoで聴きにいったら、宇垣美里さんが『白い鶴よ』をおすすめ本として熱いプレゼンをしてくれていて、びっくりしました。宇垣さんが奥渋谷のしゃれたブックストアに立ち寄ったところ、そこにこの本が積んであって、まず帯の絵に目がいったそうです。

「これはもしや蔵西先生の絵では?」と手に取ったのが、『白い鶴よ』との出会いだったとお話しされていました。

ラジオでの宇垣さんのプレゼンがきっかけでたくさんの人が買ってくれて、発売から2か月で重版になるという前代未聞のことが起きたんですよね。

蔵西:すごいですね。

:それを知った大学の広報からインタビューの依頼があって、さっき話題になった『指さし』を一緒に作った浅井万友美さん(なれそめ編参考:『旅の指さし会話帳 チベット』)がインタビュアーになってくれたんです。

そのインタビューの中で「アトロクありがとう」と言ったら、それが番組の放送作家さんの目に止まってラジオ出演に声をかけてくれた、という経緯でした。

蔵西:なんという流れ。

:そんなことがあるんですね。 宇垣さんは蔵西さんの漫画を『ダ・ヴィンチ』や『週刊文春』で紹介されていて、ファンを公言されてますよね。

宇垣さんは漫画もアニメも映画も、たくさん観てお仕事されていますが、小説もたくさん読んでいる方で、外国文学もよく読んでいる方で。

「アトロク」でも宇垣さんの登場する火曜日は外国文学をよく取り上げています。 蔵西さんの帯絵のインパクトのおかげでこんなことになりました。感謝です。

蔵西:えっ、でも先生、最初は帯絵のこの2人(物語の中心人物であるテンガとポール)を描く予定はなかったんですよね。

中の絵地図は描いていましたが、この2人がせつなくて好きで好きで、キャラ描きたいです、と私が言ったら、星先生が「描いてもいいのよ」とお返事くださって。 じゃあ描こっかな!と描いてこうなった。

:そうそう。蔵西さんから「ファンアートを描いてもいいですか?」ってメールをいただいて、いいよいいよって言って。

ただ、その時も帯絵をお願いしたわけでもなかったんですよね。

帯の推薦文を蔵西さんにお願いすることだけが決まっていました。

というのも『月と金のシャングリラ』の第一巻の帯文は私に依頼してくださったので、『白い鶴よ』は蔵西さんにぜひお願いしたいと思っていたんです。

蔵西さんのイラストが素晴らしかったので、書肆侃侃房からの提案で帯に絵も添えることになりました。

蔵西:ね。何気ないところからこうなったというか。不思議。

:そう。ほぼ雑談的なところからこの帯絵が生まれた。

蔵西:まぁ元を言えば「萌え」ですけどね。

せつなくて愛おしいところが発端。この本は本当にすごい内容ですから。

W:蔵西先生の「萌え」パワーできっと、本屋さんで人の目に留まって手に取る人も多かったんじゃないかなと思いました。絵がないのとあるのとじゃ……

蔵西:でも、こういう絵があると嫌だという人もきっといるので、そういう人のことは逃しちゃったかなという気はするんですけど。

W:いえいえ、蔵西先生の絵がこの本の魅力をより一層引き立てていると思います。

:本当にありがたくて。私、あとがきに思わず、「この本を読んで面白いと思った人は、ぜひ蔵西さんの漫画も読んで!」と書きましたもん。

W:ラジオ出演されてからの『白い鶴よ』の反響はどうでしたか?

:驚いたのはAmazonですぐに在庫切れになって、中国文学で1位になったことですね。

蔵西:「ベストセラー1位」ってタグがついてたりした。

:「中国文学で」というところがなかなか味わい深いですよね。

蔵西:ね。どうして? って思うけどね。

:そうそう、アトロクの昨日の放送で取り上げられた『ヒップホップ・モンゴリア:韻がつむぐ人類学』という、国立民族学博物館の島村一平先生が書かれた本があるんですが、宇多丸さんがその本の帯を書いてるんですよね。本の紹介に惹かれて読んでみたらすごく面白かった。

先週の放送(星泉出演回)の後、本読みましたと放送作家の古川耕さんに伝えておいたら、昨日の放送でもまたチベット文学の話を少ししてくれたんです。よかったら聴いてみてください。

E:その放送聴きました。「モンゴルのヒップホップの話と先週のチベット文学の話をあわせて聴いてください」と宇垣さんがお話されていて、また素晴らしい相乗効果が生まれたなと思いました。ナイスフォローです。

:島村さんも『白い鶴よ』を買ってくれて、「読みます」って言ってくださったんです。

蔵西:どんどん広がっている。

:そう。嬉しかったですね。

あと先週の放送では、宇多丸さんが『白い鶴よ』を読んでくださってたっていうのが嬉しい出来事でしたね。実は、ラジオの台本では宇多丸さんは本を読んでいないという前提で書かれていたんですよ。

でも、オープニングトークを聴いていたら読んでくださっていることがわかって、嬉しかったですね。

お二人とも関心を持ってくださっているのが伝わってきて、会話しながら興奮してました。

E:クリエイティブな連鎖反応が起こっていますね。

イラスト:蔵西
ちびテンガとちびポーロ ちびテンガとちびポーロ

本インタビューについて

2021年4月24日公開のSERNYAブログに掲載された同タイトルのテキストを転載したものです。
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