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路上の陽光

刊 行 2022年3月30日
著者等 ラシャムジャ (著)、星泉 (編訳)
出版社 書肆侃侃房

作品紹介

チベット語チベット文学を牽引する作家ラシャムジャの日本オリジナルの作品集です。10歳の少年が山で父の放牧の手伝いをしながら成長していく姿を描く「西の空のひとつ星」、センチェンジャの横暴におびえる中学校の教室を舞台に気弱な男子ラトゥクが勇気を持つにいたる「川のほとりの一本の木」、村でたった一人の羊飼いとなった15歳の青年が生きとし生けるものの幸せについて考える「最後の羊飼い」、そして日本を舞台にした「遥かなるサクラジマ」など8作品を収録しています。

目次

  • 路上の陽光
  • 眠れる川
  • 風に託す
  • 西の空のひとつ星
  • 川のほとりの一本の木
  • 四十男の二十歳の恋
  • 最後の羊飼い
  • 遥かなるサクラジマ
  • 訳者解説

著者紹介

ラシャムジャ

1977年、チベットのアムド地方ティカ(中国青海省海南チベット族自治州貴徳県)生まれ。北京の中央民族大学にてチベット学を修め、現在は北京の中国チベット学研究センターの宗教学部門の研究員としてチベット仏教に関する研究を進めるかたわら、チベット語の小説を雑誌等に発表している。小説集としては『路上の陽光』、『ラシャムジャ中編小説集』、『眠れる川』、長編小説『雪を待つ』、エッセイ集に『私の孤独、あなたの文学』がある。チベット語文芸雑誌『ダンチャル』の主催する文学賞を歴代最多となる5回受賞(うち1回は新人賞)しており、2012年には中国の民族文学母語作家賞、2020年には全国少数民族文学創作駿馬賞(中短編小説賞)を受賞しているなど、現在30‒40代の作家の中で最も注目される作家の一人である。

著者からのメッセージ

親愛なる日本の読者のみなさまへ

お久しぶりです。数年前私の長編小説『雪を待つ』を日本語に翻訳してくれた「チメイさん」こと星泉さんが、今度は私の短編小説の日本語作品集をみなさまの元に届けてくれました。かつて翻訳された長編小説がみなさまの琴線に触れ、私の他の作品をもっと味わってみたいと思ってくださったのかもしれない──そう思ってわが心を慰めています。それが事実だったなら、どんなにか嬉しいことでしょう。この本に収録された短編小説は、いずれもチベットの人びとの生活を垣間見ることのできる窓であると同時に、そのどれもが私の心の窓でもあります。ですから、この本を読めば、チベットの人びとの内側を見ることができると同時に、私の心のうちも覗くことになるでしょう。そうすることで私たちはお互いをもっと知ることができ、お互いの距離を縮めることができます。そうできたら、こんな嬉しいことはありません。

2022年4月14日
北京にてラシャムジャより

訳者からひとこと

1980年代のチベットの山村にタイムスリップしたような感覚を味わえると話題になった邦訳長編小説『雪を待つ』から7年、ようやく短編小説集を刊行することができました。ラシャムジャさんと知り合ったのは2013年11年。高野山大学で開催された日本チベット学会の研究大会でした。文学の話ですぐに意気投合し、当時書き上げたばかりの未発表原稿を送ってもらい、最初の読者の一人になるという幸せな体験をして以来、ほぼ全ての小説を読んできました。人の心を動かす素晴らしい作品が多く、いつか邦訳短編集を出したいと思っていました。2018年から2019年にかけて、東京外国語大学アジア・アフリカ言語文化研究所に招へいし、半年間、共同研究をする機会がありましたので、その際に作品集の収録作品について相談する機会を持ち、仮のラインナップを決めました。そうこうするうちに、なんと、ラシャムジャさんは滞在中に2篇の小説を書き上げてくれましたので、ラインナップを組み替え、2010年から2020年の間に発表した8篇の作品を収録した作品集となりました。

ラシャムジャさんの小説は、若い人の心に寄り添い、そっと背中を押すような作品が特徴で、巧みな比喩をつかった描写力の確かさには定評があります。いろいろな世代の方に楽しんでいただける作品集となっていますので、ぜひ手にとってみてください。

書肆侃侃房『路上の陽光』サイトへ(表題作の試し読みもできます。)
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